地域医療の「自立」回復へ、模索続く石巻－【震災3か月】

地域医療の「自立」回復へ、模索続く石巻－【震災3か月】



　宮城県北部の沿岸地域でも、特に大きな損害を受けたのが石巻市だ。東日本大震災発生から3か月が経過した今、同市の医療関係者は、震災の“爪痕”に苦しみながら、医療提供体制の「自立」回復を目指し、模索を続けている。



　5795人もの死者・行方不明者を出した同市では、医療機関も大きなダメージを受けた。宮城県医師会が発表した資料によれば、同市医師会の担当地区にある8病院、75診療所のうち、全壊したのは2病院・23診療所。県内の全壊施設(9病院・68診療所)の3割が、この地域に集中している。



　それでも同市医師会の新妻博事務局長よると、「既に被災した医師の9割は、震災前と同様の活動を再開している」という。



■高齢化と2次医療機関の被災が診療所再開の足かせに



　ただ、震災のダメージから立ち直れない医師も多い。同市医師会によれば、津波や地震の影響で閉院を余儀なくされた診療所は8か所。まだ再開できない診療所は5か所あるという。つまり、同市とその周辺では、震災から3か月を経過した現在でも75か所あった診療所のうち13か所が閉じたままになっているのだ。

　その背景について、新妻事務局長は、以下のように説明する。

「この土地では医師の高齢化も進んでいます。医師会に所属する開業医の平均年齢は、おそらく65歳を超えるでしょう。それだけに、借金をして診療所を再建・再開することに、ためらいを感じる医師も多いようです」



　さらに新妻事務局長は、詳しい検査が必要な患者や、緊急の治療を要する患者を受け入れる2次医療機関の復興計画がはっきりしていない点も、開業医の不安の種になっているという。

　事実、同市の2次医療を担ってきた石巻市立病院では、入院による治療は再開していない。同病院の伊勢秀雄病院長は、「100床前後の仮設病院の開設を検討してはいるが、『震災の被害を受けていない上、市が使える一定程度の広さの土地』となると、確保することが難しいのです。その上、医師の半数以上が退職し、県内外の病院に移ってもいます。入院の再開については見通しも立っていません」としている。



■まだ医療救護チームの支援が不可欠な地域も



　さらに同市内では、震災発生から3か月を経過した今でも、日本赤十字社や県外から派遣された医師らが組織する医療救護チームが活動している。震災発生後の3月末(72チーム)に比べれば、その数は5分の1程度(14チーム、6月6日段階)まで減った。それでも同市で活動する医療救護チームは、県内で最も多い=グラフ参照=



　石巻赤十字病院の医師で県災害医療コーディネーターの石井正氏は、市内でも、湊地区や鹿妻地区、渡波地区を含む「旧北上川以東」と、「雄勝町地区」、「北上町地区」といった地域では、いまだに救護チームの支援が不可欠と指摘する。

「北上町や雄勝町では、病院や診療所が津波で壊滅的な打撃を受けました。一方、旧北上川以東の地区では、下水道の復旧の遅れなどの影響で避難所の衛生状態が悪い上、病院や診療所へ出向くための車がない住民も多いのです」



　こうした状況を受け、北上地区や雄勝地区の避難所や診療所には、医療救護チームが定期的に派遣されているほか、旧北上川以東には、救護所が4か所設置されている。ただ、石井氏は、医療救護チーム頼りの医療提供体制が続くことを問題視している。

「今後は仮設診療所の設置や、無料巡回バスを導入するなどの取り組みを強化し、医療救護チームに頼らない地域医療の提供体制を目指さなければなりません」

　実際、旧北上川以東の地区では、6月中旬から7月中旬にかけて、避難所と行政機関、病院、診療所などを巡回するバスが運行する予定であるという。この巡回バスの導入について、石井氏は6月から7月に実施することこそがポイントと力を込める。

「同市の場合、7月1日以降も医療費の窓口負担を免除してもらうには、市役所で『一部負担金などの免除証明書』の交付を受けなければなりません。ただ、車などの移動手段を失った市民にとって、市役所や支所に出向くのはそう簡単なことではない。この点を見落とし、何もフォローしないでいると『診療所での治療費を無料にしてもらうために市役所に出向くより、最寄りの救護所で無料の薬をもらい続ける方が便利』と考える市民が増え、地域の医療提供体制の自立にも悪影響を及ぼす可能性があるのです」　





(この記事は社会（医療介護ＣＢニュース）から引用させて頂きました)



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